2018年8月29日の読売新聞に次のような見出しの記事が掲載されていました。
『宿題の「出品」ダメ』
以前から、夏休みの宿題で行われるような自由研究や読書感想文がネットで販売されている問題がニュースになっていました。
2018年8月に文部科学省が、インターネット上のフリーマーケットやオークションサイトを運営する、
「メルカリ」、「楽天」、「ヤフー」
の大手3社に対して、
宿題として学校に提出されることを想定した作品の出品を禁止
するように要請したというものです。
3社はこの要請に対して合意。
メルカリ→出品禁止品に「宿題や自由研究、論文の代行など(完成品を含む)」を含めた
ラクマ、ヤフオク→宿題とみられる品物は見つけ次第、削除する
といったように対応するようです。
メルカリはすでに売買契約がなされたものも、キャンセル扱いにすると発表しています。
今回は、この宿題の出品について考えていきたいと思います。
これまでどんな品が出品されていたのか
読売新聞の記事では、夏休みの宿題として出品されている例として次のようなものを掲載していました。
〇手作りスカーフ「夏休みの宿題にいかがですか。とても丁寧に作っています」2000円
〇宇宙の研究レポート「中学生用に作成した自由研究レポートです」1800円
〇手作り貯金箱「小学生の夏休みの宿題に」500円
〇読書感想文「高校生向けかと思います。あえて完璧に仕上げてないのでご安心ください」1100円
また、翌日のニュースでも、この件には取り上げられており、その中では、
〇夏休みの宿題 アリの巣キットの資料 観察済み「約1週間分のアリの巣を研究した資料。夏休みの宿題が一気に仕上がりますよ」800円
というものが紹介されていました。
ニュースを見ましたが、アリの巣ができていく過程を写真に何枚も収めて丁寧に作っていることがうかがえました。
私自身も、以前報道があった際に、どんな出品があるのか見たことがあります。
アイスの棒で作った貯金箱や、小学校用、中学校用と内容をその年代に合わせて書いた読書感想文などがあったことを記憶しています。
現状はどうなっているのか
現状がどうなっているのか気になったのでメルカリへ。
検索ワードとして、
「夏休みの宿題」、「自由研究」、「読書感想文」
を使用して調べてみました。
調べてみると、さすがメルカリさん!
これまで大量にあった夏休みの宿題がぜんぜんなくなっていました!
「夏休みの宿題」、「自由研究」に対しては、完成品は見当たりませんでした。
その代わりに売られていたのが、宿題の材料です。
〇トイレットペーパーの芯
〇ペットボトルのキャップ
〇手作り写真立ての材料
といった品物です。
これは完成品ではなく、それを使って自分で宿題をやるということなので問題ないのでしょう。
「読書感想文」で調べると、出てくるのは、読書感想文の書き方といった指南書や、読書感想文の指定図書となっている一般書籍ばかりでした。
もう少し残っているかと思っていたのですが、とても対応が早いです。
なぜ夏休みの宿題を購入するのか
宿題が間に合わないから
夏休みに入ると、子どもは遊ぶことで頭がいっぱいです。
親から、
「宿題ちゃんとやりなさい!」
と言われても、
「まだ夏休みはいっぱいあるもん!」
と思って遊んじゃいますよね。
そして8月が終わりに近づき、宿題がたくさん残っていることに気づきます。
親も、
「だからちゃんとやりなさいって言ったじゃない!」
と怒るけれどあとの祭り。
始業式直前に家族みんなで一緒に宿題に取り組む家庭も割と多い気がします。
そんなときの最終手段なのでしょうか。
800円あれば宿題が一つ終わると思ってしまうのかもしれませんね。
何事も早め早めに取り組むことが大事です。
単純に面倒だから
自由研究も読書感想文もきちんと取り組むのはとても大変です。
親も夏休みを迎えるたびに、
「どうやってうちの子にやれせようか」
と頭を悩ませていることだと思います。
私も自由研究がとにかく苦手でした。
自由と言われても何をしたらいいのかわからないのですよね。
考えるのも大変なら実際に作成するのも大変です。
それでいて、ある程度の評価がほしいとなるともっと大変です。
上記したアリの巣研究でも、何日もその様子を記録して、写真を撮って印刷して、記録帳のような形にまとめなければいけません。
そうなると、ネットに頼りたくなる気持ちもわからなくはありません。
受験勉強があるから
職場でこの夏休みの宿題の話をしていたときに先輩が、
「中学受験があるから、自由研究や読書感想文をやらせない親がいるらしいよ」
と話していました。
私は中学受験とは縁がなかったから、
「そういう考えもあるのか!」
と驚きました。
確かに、中学受験を目指す人たちは、そこが一つのゴールということもあるので、それ以外のことに時間を割きたくないという意識があるのだと思います。
メリットよりデメリットの方が大きそう
メリットとして考えられることは、
〇時間が奪われない
〇労力がかからない
の2つくらいでしょうか。
これ自体も大事なことではあります。
でもデメリットを考えてみるとこちらの方が大きい気がします。
ずるをしてもいいと考えてしまう
子どもは親の行動をみていろんなことを学びます。
親が、自由研究や読書感想文をお金で買って済ませているのを見たら、
「それでいいんだ!」
と子どもは思ってしまいますよね。
例えそれが受験勉強のためだとしても、他に大事なことがあれば、多少のずるは仕方ないと考えるようになるかもしれません。
テレビのインタビューで小学生くらいの男の子が、宿題が売られていることについて聞かれて、
「ずるいことはしちゃいけないと思います」
と答えていました。
自分の子どもも、ずるはダメと言えるように育ってほしいと思います。
お金があれば何とかなると考えてしまう
ずるを覚えるのとも似ていますが、宿題だってお金で買えてしまうんだと思ってほしくはないですよね。
親にそんなつもりはなくても、子どもはきっとそう感じます。
お金の大切さを子どもに教えることは必要だと思っています。
でもお金が大切なのと、お金があればそれでいいのとではぜんぜん違いますね。
子どもが後ろめたい気持ちを抱えてしまう
どういう状況で宿題を買ったかにもよりますが、それがもし親本位の気持ちから買ったのであれば子どもは後ろめたい気持ちを持つと思います。
子どもも多かれ少なかれ宿題はやるものだという意識を持っています。
周りの友達はみんな夏休みの間にやってきているのに、自分は自分でやっていない。
買った物を持ってきた。
そのときに子どもがどんな気持ちで学校にいるのだろうかと考えると、とても買おうとは思えません。
友達が自由研究をこうやって作ったと話している横で、その子はどう思うか。
「自分は買ったものを持ってきた」
なんて言えませんよね。
子どもの成長の機会を奪うことになる
そもそもなぜ、そんな宿題があるのかと考えると、それは子どもを育てるためですよね。
豊かな発想や、根気強く実行すること、計画的に考えることなど、意図している教育的効果はいろいろとあるでしょう。
もちろん、その通りに行く事ばかりではありませんが、その成長の機会を奪われてしまうのは残念なことだと思います。
私も夏休みの自由研究は苦手でしたが、なんとか完成させたときはとても嬉しいようなほっとしたような気持ちを持ったものです。
終わりに
そもそも、夏休みの宿題が多すぎるのではないかという声もあります。
また、購入する側もですが、出品する側のモラルというものも心配されますね。
そういった問題もありますが、各家庭で自分の子どもにとってどんな形が望ましいのかを考えていくことが大切だと思います。
子どもを持つ身としてはあまり他人事とは思えない内容だったためこうして書かせてもらいました。
できれば、夏休みの始めに親と子どもで宿題のことを相談できるといいですね。
そして、家族みんなが楽しめる夏休みを毎年過ごしていけることを願っています。