心理系の資格の一つとして、『公認心理師』があります。
2017年に誕生した比較的新しい資格で、心理系の資格としては唯一の国家資格となります。
これまでは心理の資格といえば『臨床心理士』でしたが、国家資格ということもあり、『公認心理師』に注目が集まっています。
では、『公認心理師』とはどういった資格なのでしょうか。
『公認心理師』の内容や、受験資格、臨床心理士との違いなどを学んでいきましょう。
『公認心理師』とは
2017年に誕生した唯一の国家資格!
『公認心理師』は、『公認心理師法』に規定された心理学系として唯一の国家資格です。
2015年9月9日に『公認心理師法』が成立、2017年9月15日に施行されました。
2019年12月24日には一部改正が行われましたが大枠は変わっていません。
この『公認心理師法』の施行により、2018年から『公認心理師』が誕生しました。
こうした心理系の国家資格の誕生は2000年前半から議論がありました。
しかし、関係団体の意見の集約や合意形成が難しく、何度も審議を重ねて、ようやく2018年の施行にいたりました。
『公認心理士』ではなく『公認心理師』
名称について、『公認心理士』と誤解する人もいますが、正しくは『公認心理師』になります。
名称については、『公認心理師法第44条』に規定されています。
(名称の使用制限)
第四十四条 公認心理師でない者は、公認心理師という名称を使用してはならない。
2 前項に規定するもののほか、公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない。
この条文によって、『公認心理師』以外の人が公認心理師という名称を使うことはできません。
さらに、『心理師』という文字を使用することも認められません。
つまり、
「私は〇〇心理師だ!」
と勝手に名乗ることはできないわけです。
臨床心理士が臨床心理師となることはない!ということです。
これは『公認心理師』が名称独占資格であることを規定したものです。
ちなみに名称独占資格としては、保育士、社会福祉士、調理師、管理栄養士など法律で規定されている資格があげられます。
『公認心理師』の役割
厚生労働省のホームページをのぞいてみると、『公認心理師』について、以下のように説明しています。
公認心理師とは、公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいいます。
(1)心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析
(2)心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助
(3)心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助
(4)心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供
(厚生労働省ホームページより)
これだけ見るとこれまであったぼんやりとしていて役割がはっきりしませんね。
『公認心理師法』にはもう少し細かい規定もありますが、教育、医療・保健、福祉、司法・矯正、労働・産業、学術・研究など多岐にわたる領域が活動の舞台となります。
これはあえて特定の分野に限定しないことによって「汎用性」「領域横断性」を特長をもたせたことになります。
『公認心理師』と『臨床心理士』の違いは
資格区分の違い
『公認心理師』と『臨床心理士』の違いは多くの人が気になるところだと思います。
一番わかりやすい違いは、
〇公認心理師=国家資格
〇臨床心理士=民間資格
という資格の区分です。
上記したとおり、『公認心理師』については、『公認心理師法』という法律によって明文化されているため、国家資格という扱いになります。
求められる役割の違い
『公認心理師』と『臨床心理士』の2つ目の違い。
それは、名目上、求められている役割です。
しかしこの役割の違いがわかりづらい。
簡単にあらわすと以下のようになります。
【公認心理師】
(1)心理査定(アセスメント)
(2)心理面接(カウンセリング)
(3)関係者への面接
(4)心の健康に関する知識の普及のための教育・情報の提供活動
【臨床心理士】
(1)臨床心理学的査定(アセスメント):面接や観察をとおし、相手の状況を把握し、援助の方針などを決める
(2)臨床心理学的面接(カウンセリング):カウンセリング及び心理療法を行う
(3)地域援助:周囲の環境(学校・家族・職場など)にも働きかけて援助を行う
(4)調査・研究(臨床心理学):心の問題への援助を行っていくうえで、知識や技術を高めるための調査や研究を行う
とても似ていることがわかると思います。
大きな違いとしては、『公認心理師』には、業務として「心の健康に関する知識を普及するための教育・情報の提供活動」があります。
逆に教育・情報の提供はありませんが、『臨床心理士』には、「臨床心理学の調査・研究」があります。
この違いから、臨床心理士の方がより専門的な部分を求められているように感じます。
免許更新の有無の違い
将来的に公認心理師がどうなるかはわかりませんが、現時点では、
〇公認心理師=免許の更新はない
〇臨床心理士=5年ごとに免許の更新が必要
となります。
臨床心理士を取得している人は、更新のために必要なポイントを手にするために、仕事の合間に研修に参加したり、研究をしたりしています。
この点からも、より臨床心理士の方が専門的なものが求められるといえます。
『公認心理師』になるためには
公認心理師試験を受験して合格する!
国家資格なので当然試験があります。
試験については、『公認心理師法』の二章にあたる第4条から第27条に規定されています。
試験は年に1回。
第1回目の試験は2018年9月でしたが、そこから毎年約1か月ずつ前倒しにしていく予定です。
第1回公認心理師試験 2018年9月実施
第2回公認心理師試験 2019年8月実施
第3回公認心理師試験 2020年12月20日(コロナの影響で12月になる)
第4回公認心理師試験 2021年9月19日に決定
第5回公認心理師試験 2022年予定(現任者が受験できる最後の年)
第6回公認心理師試験 2023年予定
第7回公認心理師試験 2024年予定
公認心理師試験の受験資格
公認心理師試験の受験資格は、
1 公認心理師カリキュラムを持つ4年生大学の学部を卒業後、
(1)特定の期間で2年以上の実務経験を積む
(2)公認心理師カリキュラムを持つ大学院に入学・修了
2 経過措置期間に現任者講習を受けること
となります。
受験資格の区分としてA~Gにわかれており、A~Fまでは、上記1のとおりまず4年生大学を卒業することが最低条件であり、その後の進路によって当てはまる区分が変わります。
区分Gが上記2の現任者講習を受けた人に受験資格が与えらるものです。
現任者講習とは
現任者講習をともなう経過措置とは
『公認心理師法』が2017年に施行されたため、公認心理師カリキュラムを6年間おさめた人が出てくるまで時間がかかります。
また、現在心理の仕事を行っている人が『公認心理師』の資格を取得するためのハードルがとても高いものになってしまいます。
そこで、現在心理の仕事に就いているものや心理学系の大学生等のための経過措置が定められました。
それは、2017年9月15日以前に、特定の実務経験が5年以上ある人については、現任者講習会に参加することで、公認心理師試験の受験資格がもらえるというものです。
あくまで受験資格であり、その後、試験には合格する必要があります。
現任者講習会の参加対象者
区分Gで受験する場合、試験の申込に際して、実務経験が週1日5年以上という証明が必要になります。
そのため、現任者講習会の参加対象者には、週1日5年以上の実務経験が必要になります。
実務経験とみなされる仕事は、大きくわけて5つの分野があり、
保険医療 | 病院、診療所、介護療養型医療施設、保健所、介護老人保健施設など |
---|---|
福祉 | 障害者支援施設、児童福祉施設、認定こども園、老人福祉施など |
教育 | 学校、教育委員会など |
司法・犯罪 | 裁判所、更生施設、刑務所、少年院、保護観察所など |
産業・労働 | 広域障害者職業センター、地域障害者就業・生活支援センターなど |
となります。
現任者講習会の費用と内容
公認心理師現任者講習会を開催する団体は複数あります。
その中の一般財団法人日本心理研修センターを例にあげると以下のようになります。
【1単元90分を1日に5単元】
90分×5×4日間コース=合計30時間
平日コース・平日土日コースなどがある。
講習内容と時間割は定められているため、どの講習会に参加してもトータル30時間となります。
平日のみなのか、土日平日含めるのか、期間はいつからいつまでなのかといったことは団体によって異なります。
講習会の内容は、
〇公認心理師の職責に関する事項
〇公認心理師が活躍すると考えられる主な分野に関する法規や制度
〇精神医学を含む医学に関する知識
〇心理的アセスメント
〇心理支援
といったものになります。
また、参加費用はおおむね7万円程度と考えておきましょう。
2020年はオンラインでの開催もありました。
私はこの現任者講習を受けましたが、講習代が5万円とテキスト代でした。
オンラインは小刻みに行えたので自分のタイミングでできてとてもよかったです。
現任者講習会を受けるならチャンスはあと1年!
現任者講習会を受けようと思っている人がいたら急ぎましょう。
区分Gで受験できるのは、2022年度までとなっています。
つまり、2022年に予定されている第5回公認心理師試験が参加できる最後の試験となります。
それ以降になると、通常のカリキュラムを学んだ人にしか間口が開かれませんので注意が必要です。
公認心理師試験について
公認心理師試験の実施内容
公認心理師試験は、マークシート式の試験になります。
「公認心理師として具有すべき知識及び技能についての問題」とされており、試験時間は、午前に120分、午後に120分となっています。
弱視者などは、症状にあわせて試験時間が長めに設定されています。
合格の基準は、正答率60%以上です。
公認心理師試験の合格率
公認心理師試験の合格率です。
〇2018年 79.1%(受験者36,103人、合格者28,574人)
〇2019年 46.4%(受験者16,948人、合格者7,864人)
となります。
初年度が受験者、合格者ともに高くなっています。
第1回公認心理師試験(2018年)の合格率が高かったため、難易度があがったのか、第2回公認心理師試験では50%を切る合格率となっています。
公認心理師試験の勉強方法について
大きくわけると、
〇自分で勉強する
〇講習やセミナーに参加する(オンラインを含む)
の2択になります。
個人的には、自分で勉強ができる人であれば、特に講習やセミナーに通う必要はないと思います。
テキストも書店に出ていますし、スマホアプリでも過去問を学べます。
教える側も、まだ試験自体が3回しか行われていないため、明確な対策などはできていない点や、自分で勉強した方が安価になることからそう考えます。
ただし、そういった場所の方が本気で取り組める人や、なにがなんでも合格を勝ち取る!という人は、講習やセミナーの方がいいかもしれません。
自分で勉強するのであれば、テキストを購入して隙間時間に勉強あるのみです。
ざっとネットで見ただけでも、テキストは10種類以上販売されています。
どれを選ぶかまずそこで悩みますね。
内容の充実も大事ですが、まずは自分にとって読みやすく飽きなさそうなものを手にすることをおすすめします。
講習やセミナーに参加して勉強するというのであれば、そういった資格取得に特化した会社はたくさんあります。
またそうした会社は、独自のテキストを作成しているので、教材としてはかなり信用ができます。
各社のホームページに詳細に書かれていますので、まずはそちらを見てみましょう。
LECの通信講座おわりに
『公認心理師』という資格が誕生した背景には、それだけ心理の仕事が求められる時代がきているといくことだと思います。
この資格を取ったあと、本当に心理の世界で働く人もいれば、とりあえず資格がほしいという人もいると思います。
この先どういう道に進むにしても、この心理というものは必ずついて回るものであり、学んだことは必ず生かされます。
日々忙しくする中、勉強するのは大変ですが、今のこの時間が将来の役に立つと思い頑張っていきましょう。