小説

バレエ団という特殊な空間と加賀の恋の行方。東野圭吾『眠りの森』

刑事になって、大学生の頃よりもその鋭さが増しています!

 

今回紹介するのは、東野圭吾さんの、

『眠りの森』です!

 

<加賀恭一郎>シリーズの2作品目になります。

前作の『卒業』のあと、教師をへて、刑事になった加賀恭一郎が出てきます。

 

『眠りの森』のあらすじ

高柳バレエ団の事務所で男性が殺された。

被疑者は、女性団員・斎藤葉瑠子。

 

バレエ団は彼女の正当防衛を主張していた。

男性は、窓から侵入し、そこにいた斎藤葉瑠子に襲いかかり、抵抗した葉瑠子によって花瓶を頭に打ちつけられたのであった。

 

強盗目的の末の正当防衛かと思われたが、それを証明づけることができず、捜査を進めるうちに不審な点も出てくる。

 

一方で、捜査にあたっていた加賀は、以前、高柳バレエ団の公演を観たときから心惹かれていた浅岡未緒のことを気にかける。

といったところになります。

バレエ団という閉鎖的なところで起きた殺人。

事件の真相とともに、加賀の恋の行方も気になる作品です。

 

バレエ団という閉鎖的な空間

『眠りの森』を読んで一番に感じたのは、バレエ団という特殊な環境。

閉鎖的な空間であるからこその独特の雰囲気があります。

 

バレエは1日休んでしまうと、それを取り返すために何日もかかってしまうそうです。

毎日、練習を繰り返し、すべての時間をバレエのために費やしていく。

給料がしっかりと出るわけでもなく、むしろ、バレエ団を維持するために、アルバイトをしながら生活をして、自分たちがお金を出すという場合もあるようです。

 

本作の高柳バレエ団では、梶田という指導者がいます。

その梶田の理想とするバレリーナを目指して、多くの団員が無理なダイエットをしているという描写もありました。

 

刑事や一般の人にはわからない、そこの中にいる人にしかわからない感覚があるようです。

 

大切な相手のために自分を犠牲にできるか

バレエ団の閉鎖的な空間というポイント以外に、この作品では、大切な人のために自分を犠牲にするという点も注目するポイントだと思います。

<探偵ガリレオ>シリーズの『容疑者Xの献身』でも、そうした部分がありましたが、東野圭吾さんは、そうした人の情のようなものを作品に表すことが多いですね。

個人的にはそうした情に深い作品はとても好きです。

 

本作でも、誰かのために行動する登場人物が複数存在します。

それは、親愛の情であったり、償いの気持ちであったりと様々ですが、本来、自分一人であれば、人はそこまで行動できないのではないかと感じます。

 

誰かのためにという気持ちがあるからこそ、苦しいこと、難しいことにも挑むことができるのだと思います。

 

終わりに

<加賀恭一郎>シリーズの2作品目ということもあり、まだまだ加賀が若い!

『卒業』に比べると、ずいぶんと大人になった加賀ですが、シリーズが進むにつれて、どんどんと成長していく加賀を見ていくのも楽しいですね。

 

『眠りの森』のラストの終わり方もとても気になります。

その続きにあたる部分は、『祈りの幕が下りる時』が出ている現在でも、特に描写が見られないので、どこかで出てきてくれないかなと思ってしまいます。

 

『眠りの森』の次の作品は、『どちらかが彼女を殺した』ですね。

この作品も見ごたえがある上に、自分でしっかりと推理していかないといけないため、じっくり時間をかけて読みたいです。

 

<「価値ある嘘というものも、あるいは存在するのかもしれない」東野圭吾の『卒業』に学ぶ