小説

東野圭吾の『赤い指』親の在り方、子の在り方を考えさせられる一冊。<加賀恭一郎>シリーズの7作目。

家庭において問題が起きたときにどう対処するか。

きちんと向き合うこともあれば、時間が解決するのに任せることもある。

でも、自分は関係ないと逃げ出してしまうと気づけばどうにもならないことになってしまう。

 

今回紹介する本は、東野圭吾さんの、

『赤い指』です!

 

東野圭吾さんの<加賀恭一郎>シリーズの7作目になります。

家族の問題を書かせると東野圭吾さんは本当にうまいと思います。

 

『赤い指』のあらすじ

前原昭夫は、仕事が終わっても、職場で必要のない残業をしていた。

家にいるのは、認知症の母親・政恵。

母親と折り合いが悪く、不満ばかりを言う妻・八重子。

親和性に欠け、部屋でゲームばかりの息子・直巳。

 

八重子から昭夫に電話があり、すぐに帰ってきてほしいという。

事情をきちんと話さない八重子に疑念を持ちながら家に帰った昭夫が見たものは、庭でビニール袋をかけられた少女の遺体。

直巳が身勝手な理由により殺害をしてしまったのであった。

警察に通報しようとする昭夫であったが、八重子が、

「直巳の将来が台無しになってしまう!」

といい、隠ぺい工作をすることとなる。

 

昭夫は、少女の遺体を近くの公園に隠すが、翌日には遺体が発見され、警察の捜査が始まった。

隠し通すことができないと思った昭夫や八重子がとったのは非道な手段であった。

 

『赤い指』を読んで思うこと

前原一家のダメ具合に怒りさえ覚える

『赤い指』に出てくる前原一家。

とても駄目な家庭の典型です。

 

家長である昭夫は、家庭の問題に深く関わろうとしません。

妻と母親との間に確執が生まれたときも、時間が解決するだろうと自分が面倒ごとに関わるのを避けようとします。

その結果、確執が埋まることはなく、母親と同居せざるを得なくなったときも、家庭内別居の状態になってしまう。

息子の直巳が学校でいじめられたときも、直巳を叱りつけてあとは知らないふり。

家庭が大変なときに自分は別の女性にのめり込む。

 

妻の八重子は義母との関係が悪くなると、一切歩み寄る姿勢を見せない。

孫に会いたがる義父母の要請は無視。

基本的に昭夫の実家には近づかない。

義父が認知症になったときもとうぜん手伝いに行くことはない。

義父が倒れたときにまず心配したのは、義父がもし亡くなっても、義母とは同居したくないということ。

 

 

そして、この夫婦は、息子の直巳が少女を殺してしまうと、直巳の人生が終わってしまうと、なんとか隠ぺいしようとする。

八重子は、部屋に逃げ込んでいる息子を叱りに行こうとする昭夫を止めて、

「殺してしまって直巳もショックを受けているのだからそっとしておいてあげて!」

などという始末。

直巳も、現実から目をそらしたくてずっとゲームに没頭。

 

『赤い指』を読みながら、

「なんていう家族だ!」

と思ってしまいます。

でも、ここまで行かなくても、これに近い家庭って割とあるんですよね。

自分の子どもが悪いことをしても、それを認めようとしない親っていますよね。

逆に親が怒らないものだから、自分勝手に好きなことをする子どもも。

どこでその家族は間違えたのだろうかといつも感じます。

寄り添うことの大切さ

前原一家のダメなところを読みながら、何がいけなかったのかと考えてしまいます。

昭夫が八重子と政恵の仲を取り持っていたらもっと違っていたのか。

八重子が少し歩み寄る姿勢を持っていたら何か変わっただろうか。

昭夫が直巳や家庭のことにもう少し目を配っていたら……。

問題が起きたときにきちんと向き合っていたら……。

 

「たら・れば」ですが、ほんの少しそれぞれが寄り添って、向き合ってお互いのことをきちんと見ることができていれば、また違った家族の形があったのかと思います。

逃げ出したり、目をそむけたりすることはとても簡単ですが、そうすることで気づけば取り返しのつかないところまでいってしまうんですね。

加賀の持つ優しさを感じる一冊

加賀はいつも鋭い視点で容疑者を追い詰めていきます。

淡々とした姿も見せますが、でも実はとても暖かく優しい人物だと感じます。

 

『赤い指』の中で次のようなセリフがあります。

”刑事というのは、真相を解明すればいいというものではない。いつ解明するか、どのようにして解明するか、ということも大切なんだ”

(東野圭吾『赤い指』p246より)

これは、少女を殺したのが前原家の誰かであるとわかったあと、加賀になぜすぐに逮捕しないのかと問う松宮刑事に対していったセリフです。

実際に警察の仕事としては、犯人を特定して逮捕すればいい。

でも加賀は、ただ真相を解明するだけでは足りないといいます。

この一家に秘められた闇に気づいていた加賀は、そこから一家が抜け出せるようにと手を打ちます。

細かい内容は本書で確認してほしいですが、加賀の人情を感じられる素敵なシーンです。

 

終わりに

『赤い指』は、東野圭吾さんの<加賀恭一郎>シリーズの中でも特に好きな一冊になります。

事件の真相解明に向かう加賀の鋭い視点ももちろん楽しいのですが、人情味あふれる姿がとてもいいですね。

次の作品の『新参者』にも加賀のそういった部分が盛りだくさんです。

 

東野圭吾さんは本当に犯罪と家族を扱った作品がとても上手で考えさせられます。

『手紙』や『さまよう刃』なんか特にそうですね。

まだ読んでない人にはぜひ読んでほしい作品です。

東野圭吾のおすすめの一冊。『手紙』のあらすじとこの本が教えてくれること

法律は犯罪被害者を守らない?東野圭吾の『さまよう刃』から学ぶ法律の壁
さて次の『新参者』からは、舞台を日本橋に移動させます。

ここからの3冊も満足できる作品です。